堀川紀夫の美術教育実践

小中学校で合わせて38年間務めました。この間に積み上げてきた美術教育あるいは美術教育の良さを生かした実践例を全国の若い先生方に伝えたいと願って公開していきます。

題材3 中学入学直後の躍動するイメージを表す

題材3 中学入学直後の躍動するイメージを表す

3 中学入学直後の躍動するイメージを表す

題材名 「太陽と人間のデザイン」

1 目標 
                                      
 太陽の光を浴びて躍動する人間のイメ-ジを色と形の変化を生かして表現する。 

2 対象 中学一年(10時間-4~5月)デザイン

3 題材観

 太陽は、万物の母。太陽は、地球の営みを支配している。人間はもちろん、全ての生命あるものは太陽のエネルギーによって生きている。太陽は、絶対者である。太陽は、ありがたいものである。太陽は、私たちに生きる希望と勇気を与えてくれる。太陽のイメ-ジは宇宙的な広がりを持っている。私たちは、太陽から学ぶことを忘れてはならない。太陽を知ることは、人間を知ることであり、己自身を知ることである。太陽について語ることは、その人の思想を語ることである。
 宇宙の中の太陽系。そして、太陽を父と母とするわが地球。地球上の一生物としての人間。人間の心の中の太陽。ことば、意味、シンボルとしての太陽。太陽のイメ-ジは果てしなく広がっていく。太陽のイメ-ジの広がりを捉えさせる中で、あこがれの中学校入学直後の生徒の心に新しい太陽を植え付けたい。太陽をモチーフとして、光のイメ-ジをデザインさせ、またその光の恵みを受けて躍動している人間や生物のイメ-ジをデザインさせたい。放射状の構成による形の大小の変化のさせ方や暖色を中心としたグラデーション等の配色効果や人間や生物の形の単純化の表現を工夫させたい。
sun.3.jpg
4 題材のイメ-ジ地図(教え育てる内容の分析)

(1) 太陽の科学的イメ-ジ

直径は地球の109倍(140万KM)、重さは33万3千倍、表面温度6千度、黒点 原子核融合反応、恒星、皆既日食、コロナ(10万度)、太陽風(毎秒1000KM)、太陽系、光球、光年、地球との距離1億4966万4千900km、彩層、紅炎、銀河系、太陽時、日時計、光エネルギー、太陽熱、寿命は約100億年

(2) 太陽の神話的イメ-ジ(象徴性)

太陽神、日神、アポロン天照大神、全知全能、不滅不死、日光菩薩、情熱、力、中心、英雄など

(3) 材料・技法からのイメ-ジ

円、同心円、放射形、大小の変化、暖色、グラデーション、プログレッション、色の感情、形の感情、色の調和、配置、構成、レイアウト、リズム、バランス、ハーモニー、形の単純化など

(4) 太陽の一般的イメ-ジ

朝の太陽、昼の太陽、夕方の太陽、朝やけ、夕やけ、明るい、まぶしい、ぽかぽか、じりじり、さんさん、かんかん、季節の太陽など

(5) 人間(中学生)の躍動のイメ-ジ

早く、高く、強く、運動する、スポーツする、走る、跳ぶ、打つ、投げる、シュートする、伸びる、ジャンプする、立ち向かう、手を取り合う、肩を組む、両手を広げる、成長する、ガッツポーズ、ヤッターポーズなど

5 指導過程(課題構成)

第一段階(Image過程)

課題1 太陽をテーマに詩か文章を書く。               (1時)

第二段階(Motif過程)

課題2 太陽の感じを鉛筆の明暗の調子生かして表現し、それに題名を付けてみる。
                                  (1/2時)
課題3 課題2で表わされたものを、コンパスと定規を生かしてすっきりとした形で 表現し直し、また題名を付けてみる。              (1/2時)

課題4 人間の躍動しているイメ-ジを単純化して表してみる。      (1時)
sun4..jpg
第三段階(Transformation, Technique過程)

課題5 課題2、3 、4で試みたことや気付いたことをもとに、「太陽と人間(中学   生としての自分達)」をテーマにした自分の創作の構想をはっきりさせる。
                                  (1時)
課題6 自分の表わしたい「太陽と人間」のイメ-ジを色と形の変化を生かして表現   する。                            (6時)

第四段階(Space, Sentiment過程)

課題7 鑑賞、反省、自己評価など。(1時)
          
6 本題材の指導のポイント

(1) 中学校入学して直後の希望に満ちている時期の題材にふさわしく、これからの自分の活躍や成長への想いを太陽によって象徴される大きな広がりの世界でおおらかに伸び伸びとイメージさせること。

(2) 題材に内包されるイメ-ジは捉え易いものであるが、それを表現する過程では彩色の段階で停滞したり、つまずいたり、意欲を失いがちである。そのため、色の塗り方やグラデーションの技法について丁寧に指導する必要がある。

(3) 太陽の光を浴びながら躍動しているイメ-ジは、全身的感覚で捉えるイメ-ジである。皮膚の熱感覚に訴えるなどして、類似や対照の配色効果を工夫させ、明るく伸び伸びとし、生きる喜びの表現のある作品に仕上げさせたい。
sun5.jpg