堀川紀夫の美術教育実践

小中学校で合わせて38年間務めました。この間に積み上げてきた美術教育あるいは美術教育の良さを生かした実践例を全国の若い先生方に伝えたいと願って公開していきます。

題材14 校庭の桜に学ぶ(総合学習へのアプローチ)

題材14 校庭の桜に学ぶ(総合学習へのアプローチ)

 総合学習へのアプローチ(T小で実践)

tukioka1 のコピー 3.jpg
tukioka1.jpg
(1) 単元名
  「校庭の桜に学ぶ」(小6学年)

(2) 単元のねらい

ア 校章のデザインの元である桜の花や桜の木と私たちの生活とのさまざまな結びつきについて考   え、桜に寄せる日本人の共通の心を感受する。
イ 開花から落葉までの桜の姿を観察し続け、季節によって移り変わる自然の営みについて知識を増  やす。
 ウ 桜の持つ食材や造形材、染材などの可能性を追求する。

(3) 単元設定の意図

ア 桜のもつ意味
 桜は、季節を愛でる春の花見の代表であり、日本人にとって最も愛され、親しみのある花木である。そして、桜は本居宣長の「敷島の 大和心を 人問わば 朝日に匂う 山桜花」とあるように日本人の心のモデルとされ、国花となっている。
 教育との関わりにおいても、四季の区別のはっきりとした一年の中で、桜の開花と入学の時期が同じに設定されており、始まり、はなやかさ、いさぎよさ、発展へのシンボルとして意味化されている。
 桜の花はその美しさ、華やかさを俳句、短歌、詩に詠まれ、絵に描かれ、デザインの元とされまた、その花木は飲食の材料や薬用、建築や造形の材料として様々な分野で利用されている。このような桜のもつ意味の広がりの中で、多様な学習や表現が成立する。
tukioka1 のコピー.jpg
イ、子供の実態と教師の願い
 私たちの身のまわりの対象は、人間のはたらきかけに応じてその存在の意味が違ってくる。身の周りの対象を学習の対象、魅力あるものにしていくことは一重に教師の創意にかかり、またそのような対象の開発は教師の願いであり、児童の生きる力の育成に結実するものである。
 本単元は、桜の開花のはなやかさを愛でるという一般的な関わりから始めて、多様な視点により見付けた課題を追求したり、他の学習領域をクロスさせたりして多様な学習や表現活動を仕組んでいく。
 実体験に乏しさがますます進行している児童の実態を踏まえ、校庭の桜という身近でかつ深遠な世界をもつ対象とのかかわりの中から様々な視点を設けてイメージ・発想を広げ学習や表現への意欲付けをまず図りたい。追求と展開、収束と拡散の学習過程を基本的モデルとし児童と共に、感じ、考え、学習を成立させていきたい。

ウ、新学習指導要領の意味するもの
 校庭の桜にかかわることで本校の創意工夫による特色ある教育活動が可能である。まず最初は、卒業式に小枝を切って促成的に桜の花を咲かすことに着目し、桜の花を愛でる、飾ることから枝、樹皮花弁、葉など捨てるところのない素材としての可能性やことば・意味世界の広がり挑戦していきたい。
 地域や学校の特色から学習を始めさせ、児童の興味・関心を徐々に掘り起こし、横断的・総合的な課題追求、探求活動に誘っていきたい。
tukioka1 のコピー 1.jpg

(4) 単元の構造

基本的な学習の場面 学習の視点・学習及び表現課題生成の視点 学習方法・分野・培う力

1 桜の花を見る
① 桜の花の匂いの感受、桜の歌をうたう
②桜の花をの形、色、花序を描く
③ 桜の花見、花見会食、桜に酔う。
④ 花の美を丸ごと味わう。桜吹雪に会う 全身感覚
歌唱力
描画力
観察力

2 桜の枝木でつくる
tukioka1 のコピー 2.jpg
① 桜の枝木を切る。
② 桜の枝木を削る。樹皮を剥ぐ。
③ 桜の白木を曲げる。
④ 桜の枝の白木を組合せる。 刃物と巧みな手
発想力 構想力
造形力 構成力
表現力

3 桜の樹皮を活かす
つきおか2 のコピー 2.jpg
① 桜の樹皮を嗅ぐ。 
② 桜の樹皮を乾かす。
③ 桜の樹皮を煮出す。
④ 桜の樹皮で染める。
⑤ 自然に還す
⑥ 樹皮を燃やす
衣生活と染色
染色技法
染色知識

4 桜の花弁の活用
① 花をちぎる。花を盗る。花を噛む。
② 花弁を愛でる。押し花。
③ 花弁を嗅ぐ。乾燥しポプリを作る。
④ 花を味わう。
桜湯をのむ、花弁の秩序、飲食の智恵、匂いの文化、味、香りの文化、五感を使う
5 桜の葉を活かす
① 桜の葉を採集する。押し葉をつくる。
② 桜の葉の匂いを知る。桜餅を食べる
③ 桜の葉で茶をつくる。桜の葉の乾燥。
④ 桜の葉で染める。 食物の発見
染色学習
葉の機能
葉の成分
6 桜の木とあそぶ
① 桜の木に触る。つかまる。
② 桜の木にぶらさがって遊ぶ。
③ 昇って遊ぶ。木から降りる。 遊ぶ、上る、共に過ごす、語る集う、触れ合う
④ 枝に腰掛け、眺める。
⑤ 桜の樹上や木陰で時を過ごす。感じる、触る

7 植物としての桜の
 木を知る
① 校庭の桜の一年観察
② 校庭の桜の一月観察
③ 校庭の桜の一週観察
④ 校庭の桜の一日または一時間観察。共感する
見付けだす、感受する、 記録する、記述する

8 ことばと意味の世界での桜を知る
① さくら・サクラ・桜の意味。
② 植物図鑑の中での桜。
③ ことわざの中での桜。
④ 俳句、短歌、詩や文学の中の桜。 文献を調べる
検索する、列挙する、分類する

⑸ 小単元(題材)とその実践

題材1 桜を愛でる(時数1)
ねらい 卒業式や入学式の促成で咲かせた桜の美しさを鑑賞し、感想を書く。
支援のポイント ・個に応じて、表現方法を選ばせる。
・自分の心を表すことばを見付けださせる。
  学習や追求の方法 (・俳句、短歌、定型詩散文詩、随筆、感想文など)
・リングファイルに綴る
評価の視点(・桜の花の美しさの要素に気づいて表現しているか)
次への発展・関連
・桜を描く・桜満開集会
・促成的な開花と自然な開花との違い
・花見会食

題材2 桜の樹皮を剥ぐ(時数2)
ねらい 小刀などの刃物を使って花の散った、桜の枝木の皮と幹を剥いで分け、素材を作り出す。 支援のポイント ・刃物という道具の大切さと危険さに気付かせる。
・刃物の扱いについて練習させる。
・必要に応じて、手袋などを使用させる。
 学習や追求の方法 ( ・手と刃物を使って剥ぐ、削る、切る)
・白木の美しさに気付かせる。
・小枝の曲がりの美しさに気付かせる。
・生木の匂い、樹皮の匂いに気付かせる。
  評価の視点 (・木膚の美しさに気づいたか)
・後片付けをきちんとできたか。
  次への発展・関連
・木工小物の制作。・飾る・木工オブジェの制作。・使う・生け花に活かす。
つきおか2 のコピー 1.jpg
つきおか2 のコピー.jpg
題材3 桜開花を祝う(時数1/4)
ねらい 自然に咲き始めた桜の美しさを全身で感受し、感想を書く。
支援のポイント (・個に応じて、表現方法を選ばせる)
・自分の心を表すことばを見付けださせる。
学習や追求の方法 ・俳句、短歌、定型詩散文詩、随筆、感想文など
・リングファイルに綴る
  評価の視点 (・桜の花の美しさの要素に気づいて表現しているか)
・自然の大きな力、リズムに気付いているか。
 次への発展・関連
・桜を描く・桜満開集会・自然な開花との違い・花見会食

題材4 花見会食(時数1/2)
ねらい 満開の桜、晴天の下で、協力して配膳、準備をし、花を愛でながらの屋外会食を楽しむ。
  支援のポイント ・全員で協力する。・児童自身に計画させる。
・必要に応じて、敷物などを使用させる。
 学習や追求の方法
(・会食後の感想を多様な視点から掘り起こし、他の学習へと発展させたり追求させる)
・桜に寄せる日本人共通の心に気付かせる。
評価の視点(・全員が協力的に取り組んだか)
・後片付けをきちんとできたか。
  次への発展・関連 ・桜を表現している俳句、短歌、詩、小説など

題材5 桜の枝でつくる(時数2)
 ねらい 桜の小枝の白木を使って、仕える小物を作ったり、共同で環境を飾る作品をつくる。
 支援のポイント(・材料を余すことなく、有効に使用させる)
・学級・学年の共同で思い出に残る作品をつくらせる。
・余った小枝を活か方法を工夫させる。
  学習や追求の方法 (・大きめの枝の利用して造形させる)
・飾り、伝達のためのデザインを工夫させる。
・学級・学年共同の集合メッセージ作品をつくる。
 評価の視点 (・桜の枝のよさを活かして造形しているか)
・小刀や刃物、道具を適切に使っているか。
  次への発展・関連 ・環境のデザイン・桜について調べる・飾りのデザイン・伝達のデザイン
つきおか2 のコピー.jpg
つきおか2 のコピー 3.jpg
題材6 桜の樹皮で染める(時数2)
 ねらい 桜の樹皮を染料として、紙や布を染めて生活に 役立てる。
 支援のポイント(・牛乳パツクのリサイクルとリンクさせ学習活動を発展させる)
・必要な道具を揃えたり、工夫する。
・必要な小道具を、自作させる。
・染色についての事前の準備を怠りなくしておく。
 学習や追求の方法 (・牛乳パックを回収させることから学習を始める)
・紙パルプの溶液に樹皮の煮汁を入れ染める。
・ハガキや色紙の紙づくりとする。
  評価の視点 (・牛乳パックのリサイクル方法を理解したか)
・方法に従ってきちんと染色できたか。
・協力して準備したり後片付けしたりできたか。
 次への発展・関連
・樹皮による堆肥づくり
・樹皮を燃やす
・ハガキなど作ったものを実際に使う。
・さまざまな分野でのリサイクル活動

 題材7 校章のデザインの 秘密 (時数2)
 ねらい 桜の形を元とした、校章のデザインのよさについて体験的に感じ取る。
tuki1.jpg
支援のポイント
(・原図に従って、定規とコンパスで書ける、作図のプロセスを順序通りに追体験させる。)
・デザインの原理について児童自身にに気付かせるようにする。
 学習や追求の方法 (・作図の順序をプロセスに応じて図示する)
・順序通りに、正確に追体験させる。
・元の桜の花の形の美しさについて分析させる。
・桜花の形の特徴についてまとめさせる。
評価の視点(・花の形の秩序について気付くことができたか)
・定規やコンパスを適切に使うことができたか。
・シンメトリー(対称)について気付いたか。
 次への発展・関連・国花について・桜の形のシンボル化について
・形と意味の関係について
・伝達のデザイン

題材8 桜は私たちの国花(時数2)
 ねらい 桜が国の花になっている意味を調べてまとめて発表する。
 支援のポイント・桜と日本人との多様で深遠な関係について興味付けて、調べさせる。
  学習や追求の方法(・調べ学習の方法を教える)
 ・図書館や百科辞典などの活用方法を工夫させる。
・インターネットの適切な利用を工夫させる。
・国花を定める意義について考えさせる。
  評価の視点(・自分のテーマを追求できたか)
・調べ学習を計画的にできたか。
・調べたことをきちんとまとめることができたか。
  次への発展・関連 ・さくらを歌ったうたを歌う。・桜湯を飲む・万葉集の中のさくら     ・桜餅を食べる・桜の観察・桜湯の産地を調べる ・桜の花の成分分析

題材15 管理職としての3つの実践

題材15 管理職としての3つの実践

美術家教育学会通信 NO.34 ,1999年9月30日発行「Mail Box」コーナーに発表した「管理職としての3つの実践」に写真を加えました。

⒈ はじめに
 公立中学校に30年間(教頭5年)勤務し現在、小学校長2年目である。教諭の時代は、現代美術をよさを生かした創意ある美術教育を求めて、題材開発とその実践を研究テーマとしてきた。
 管理職と教諭とは役割が根本的に違う。教頭の期間で美術科を担当できたのは1年間のみであった。また、校長は法令のとおり所属職員の指導や監督はできるが、子供への直接的な授業は本務ではない。
 そこで、校長になって考えて経営方針により環境構成を重視することにした。校舎美化及び掲示活動の活性化と充実を目指し、自ら率先垂範し、もって図工・美術のよさを生かした学校づくりとしてきた。
 その他、図工科の授業にTTの立場で協力したり、教員養成実地指導や校内外の職員研修の講師として自論を展開し、図工・美術教育の振興に努めてきている。今回、本学会通信への寄稿の機会を与えていただき、管理職としての6年半の歩みの中から図工・美術の領域に位置付く実践を3つ報告したい。
⒉ 3つの実践
 ⑴ 「聖火台づくり」
ア はじめに
 新潟県では、7年前より学校の活性化を目指し、3年単位の「スクールプロジェクト事業」を展開している。学校規模に応じて予算が配当される。12学級で約100万円。その予
算をもとにした手作り備品として「聖火台づくり」に取り組んだ。

イ ねらい
 オリンピックの「聖火」、国体の「炬火」と同じ意味文脈にある「火」を体育祭・運動会で燃やし続けることにより年間で最大の学校行事、児童・生徒会行事の活性化を図る。ウ 制作のポイント
 バーナーは市販の中華料理用の強力なものを利用する。台の高さ250cm程度、ワイン
グラス型の鋼鉄製で5~6名の児童生徒で移動が可能な重さとする。予算は約20万円。設計し、施工は地元の鉄工所にお願いした。
i-0.jpg
エ 考察
 これまで、松代中、板倉中そして現任校で3基の制作を担当した。
 燃料はプロパンガスで1日中燃やし続けて10kgのボンベがほぼ終わる。その費用は約5000円程度である。年に1回だけの使用のためにぜいたくな感もあるが、炎々と燃え続ける火の芸術の教育的、演出的、象徴的な意味作用は強力で感動そのものである。
i-2.jpg
i-1.jpg

」 ⑵ 「校内ギャラリーの運営」
ア はじめに
 校舎内には作品展示にふさわしい壁面や空間が必ずあり、ギャラリーとしての活用が可能である。新指導要領でも、校内の適切な場所に作品を展示するなどして、平素の学校生活においてそれを鑑賞できるものとするとある。余裕教室の活用と相俟ってギャラリーの設置と実質ある運営が今日的課題である。
イ ねらい
 校長室前の廊下や玄関付近の壁面及び出窓部分を作品展示の校内ギャラリーとして活用し、情操教育、美術鑑賞学習の一助とする。
ウ 運営の方法
 ①子供の作品展
 ②職員や保護者の作品展
 ③地域の方々の個展やグループ展
 ④県内外の著名な作家の作品展
エ 考察
 板倉中と本校で設置してきた。板倉中では国際的な旅行家で写真の山崎慎治氏、七宝焼山本正男氏、水墨画の笹川春艸氏、洋画の小関育也氏、そして私の個展も行なった。いずれも2週間以上の長期の展示で、子供にとって本物に触れる貴重な機会となった。
 本校では昨年の10月に設置し、鉄の彫刻の霜鳥健二氏の個展の実績がある。
t-02.jpg現在は6年の共同制作の立体作品を展示している。今後10月の文化祭に合わせて地域の方々の作品展を行なうように計画を進めている。
 地域の美術館や文化財などの積極的な利用もうたわれているが、ほとんどの学校で交通手段がネックとなっている。そのために校内に適切な鑑賞作品の展示できる美術館などに近似する場所をつくり出す必要がある。
 また、既に多くの学校での実例があるが、本校のような校内ギャラリーは運営の工夫で学校を開く有効な手立ての一つとなる。

⑶ MIE(Mascot In Education)の試み
ア はじめに
 私自身親となって、子育ての過程でぬいぐるみのウシやゴジラなどを買い与えた経験はある。その頃は、ぬいぐるみや玩具の意味作用や教育的な効果について真剣に考えることはなかった。昨年の文化祭のバザーに売りに出されたカエルのぬいぐるみを手に入れたことを契機に考えが進み、その類を沢山コレクトすることとなった。現在、私の校長室には大小さまざまな30体以上のぬいぐるみ及びキャラクター玩具が同居している。
t-3.jpg
イ ねらい
 ことば遊びや連想をもとに、学校の教育目標などをマスコット化し、子供の心の居場所学び、遊び、癒しの一助とする。
ウ 試みの実際
 昨年度までの教育目標は「考える、助け合う、頑張り抜く」であった。まず最初の試みはカエルのぬいぐるみによる「カエル←→考える」の常識的意味設定であった。続いてゾウを手に入れて「助け合う←→助け合うゾウ」とこじつけてマスコットとした。その2つをギャラリーに展示したら子供たちに人気抜群。それは子供たちと私との懸橋となり、そこは、子供たちの新しい遊び場所となった。 その後、新年を迎え干支のウサギのぬいぐるみと「二兎を追わず」「うさぎ耳」「ウサギの登り坂」や「ウサギとカメ」などの諺や昔話に対応させて展示した。「頑張り抜く」は渡り鳥の雁に着目したがマスコット化は実現しなかった。
 昨年12月に新指導要領が発表になり、教育課程総体の見直しが焦眉の課題となった。今年度、新指導要領の方向に鑑み、教育目標の部分改定を行なった。新教育目標を「考える、思いやる、積み上げる」とした。
 考えるは継続し、思いやるはゾウを転用し「思いやる←→思いやるゾウ」とした。
t2.jpg
 「積み上げる」についてはマスコット化から思考モデルそのものとなった。「積み上げる」でイメージしたのはもちろん積み木。お古の積み木と算数の面積や体積の指導で使う立方体や三角柱などを掻き集め、また印刷用ロール巻き原紙の芯の紙パイプを切った円柱などを大小混ぜて置いてみた。そこは即刻、学年を超えた遊びの場所となった。積み上げては崩すという、子供の創造と破壊の小世界が余念なく繰り返されている。
エ 考察
 カエルやゾウのマスコットから始まり、トトロなどのキャラクターや積み木をギャラリーに常設的に展示して一年から半年近く経過した。この間の子供たちの反応、とりわけ仲間遊びの生成を見取る中で、それらが低学年はもとより高学年の大半にとっても教育的に有効であることを実感した。今後ともこの実感を大切に子供の目線に立ち、その心を読み取り、寄り添い、育んでいきたい。
 ところで、マスコットやキャラクターは図工・美術(造形)の領域で生み出されるものである。その意味でMIEなる造語を提案し一般化を図りたい。
t1.jpg
⒊ おわりに
 以上のとおり、現在、校長室とギャラリーが私の日常的なフィールドとなっている。子供たちを子供たちとして受容し、ふれあう日々に心洗われる発見があり、思索のための素材がある。そこでは良寛と手毬の世界に想いを馳せたり、フレーベルの恩物について改めて得心したりしている。

The Shinano River Plan -christmas presents-

1969.12.7 十日町市郵便局にて。知人の羽永光利さん別の企業の宣伝キャンペーンの仕事で十日町市内に滞在されていたことでこの行為について話をしたことから郵便局の現場に来られて撮影された。
page9image38838192
 
第一回精神生理学研究所の作品
現場の写真と郵便局のレシートで構成したレポート。
レシートの英文を書かれたのは郵便局の職員。
 
page10image56121472
羽永光利さんが読売新聞に連絡し、記事になる。1970年1月8日の社会面
 
読売新聞に載ったのを見たタイミングで米国大使より手紙が届く。話がうまく出来た感じと米国のユーモア感覚に感動した次第。
 
page12image39058048
 
読売新聞に載ったのを見たタイミングで大使館より手紙が届く。話がうまく出来た感じと米国のユーモア感覚に感動した次第。
 
 
 

The ShinanoRiver Plan -12

アポロ12号のミッションにリンクして信濃川で12個の石を拾い、池田石材店で2つに切断。半分を河原に投げ返す行為をした。石との関わりに一つの物語を作ろうとした。大久保淳二、樋熊将夫、越村克久の3名が石を拾う行為に参加。大きな石の半分は今でも持っている。
河原で石を拾ってコカ・コーラで乾杯した。コカ・コーラは若者の新しい飲み物だった。
page7image8328272
 
宮沢壮佳さん宛。
page7image8328064

 

瀧口修造さん宛。富山県美術館の滝口コレクションに収まっている。何度か展示された。Tate Century City展にも出品。最近の展示の写真を見ると荷札がなくなってしまったように見えた。

page8image8181648
 
南画廊の清水楠男さんからの領収葉書。
 
page8image8190592

The Shinano River Plan -11-2

1969年7月21日の〈石〉以後、The Ara River Plan 11を  

8月に糸魚川市展に出品

夏季休暇で帰省中であったため、上越の実家近くの関川の支流で石を拾う。糸魚川市展に出品。高田郵便局より8.20に発送。郵便料は260円。前田常作が審査員で評価され大光賞を受賞。このことで〈石〉が評価される予感を得て、積極的に実践、発展させることを決意した。

 1969.8.27

The Shinano River Plan-11−2 石を送るメールアートが評価されそうな予感があり7月21日と同じコンセプトで2回目の作品発表として発送。

赤塚行雄、川島良子(村松画廊)、清水楠男(南画廊)、白田貞夫(シロタ画廊)、並河恵美子(ルナミ画廊)、三木多聞峯村敏明、宮川 淳、宮澤壯佳(BT美術手帖編集長)、山本孝(東

京画廊)(計10個)

清水楠男さんより受け取りのハガキをいただく。

赤塚行雄さんよりコンセプチャルな領収書作品2枚をいただく。

 

美術手帳編集長宮沢壮佳さんに送った作品。

 
page6image12447520

f:id:niigata-art226:20210414100821j:plain

 
送付直後に赤塚行雄さんからコンセプチャルな領収書を2通いただく。当時、この領収書の意味、価値を十分に理解してはいなかったと思うが、作品の一部としてカードに貼ってビニールファイルに保管してきていた。
1999年に富井玲子さんが調査に来られ、ファイルに綴られているカード類を見て「作品である」と即座に判断、UKのCentury City展の出品作の一点に選ばれて驚いた次第である。
 
page6image12445440
 
page2image33280896 
 
 

 この時は速達・書留で送り届けた。

f:id:niigata-art226:20210414081559j:plain

 page3image33193616

 

南画廊の清水楠男さんより葉書で領収書をいただいた。清水さんには一度もお会いすることはなかった。南画廊は東京画廊と並んで現代美術を取り扱っていた。

 

 

page3image33188624

 

   

余談だが銀座の画廊を回り始めた頃に南画廊で中西夏之のコンパクトオブジェを見た時の感動は記憶に新鮮に残っている。当時の値段で3万円だった。欲しいと喉から手が出るようだったが当時の給料の月額以上で高値の花だった。 

 

 

The Shinano River Plan 11

 
The Shinano River Plan 11
 
前山忠さんに送った〈石〉の写真。1969年の11月くらいに前山さんの当時、勤務在住していた須原村の写真家に撮影してもらったものである。
 
page4image36597744
富井さんが2014年6月に松沢宥さんのψの部屋で発見。富井さんが撮影した写真。大切に保管されていて感動。その後、この作品は2019年のNYのJapan Societyでの荒野のラジカリズム展に出品された。
page5image36520144
 
自分のところに送った一個の石の他に〈石〉の行為を語る証となるものが ないので、自分の中にある記憶と写真などでカードを作成した。送付相手の氏名は学校のタイプライターを使用した。中原さんの佑介と松沢さんの宥の活字がなく空白にした。石の重さは300g、送料は120円。コラージュされている自作コメントは8月9日に発行された生徒会誌に寄せたものである。
このカード作成の日付は8月25日になっている。作成を始めたのは、〈石〉を自分の作品として継続していこうと決意したからである。この数日後にThe Shinano River Plan-11-2を行い10名に送ることになる。このカードの形式は瀧口修造デュシャン語録」のの巻頭に綴られた荒川修作のオマージュ作品を模倣した。
これには、7月21日の夕方に一緒に河原で石を採取した高校一年の樋熊将夫と越村克久の署名がある。このカードへの記載は10月11日付け。
 
page4image15901632
 
自伝より 

同月(8月)に、最初の石の郵送相手の一人である前田常作糸魚川市展へ審査員にこられ、そこに同種の作品を出品し、受賞という評価と助言を得ることができ、自分の中でこのメール・アートの成功を確信し、シリーズ作品としての展開を決意した。

8月末に荷札にタイトルを「The Shinano River Plan」と記載して、新たな10名に送付。すると予想以上の反響があり2ヶ月後の美術手帳11月号の李禹煥論文「観念の芸術は可能か」にコメント、作品写真、タイトル,作者名入りで取り上げられた。